①企業経営の方向性及び情報処理技術活用の方向性の決定
当社は、コロナ禍における人員不足を契機に、従来のアナログ業務の限界を痛感し、「このままでは事業の継続が危うい」という危機感のもと、全社的なデジタル化に踏み切りました。長年、手書き伝票やFAXによる受発注、紙帳票による在庫管理といった非効率的な業務運用を続けてきましたが、これを機に「デジタル化による業務効率化」と「DXによる価値創出」を経営の最重要課題として位置づけました。
当社における経営の方向性は、単なる業務の効率化にとどまらず、「変化に強く、顧客に信頼される持続可能な企業」への転換を目指すものです。情報処理技術の活用にあたっては、
・「デジタル化」=業務効率化のための手段
・「DX」=新たな価値を創出するための手段
と定義し、経営戦略の中核に据えています。
今後は、クラウド基盤(キントーン等)によるデータ一元管理やリアルタイム情報共有の仕組みを整備し、経営判断や顧客サービス改善に活用できる体制を構築してまいります。また、社内人材のITリテラシーを高めることで、「自ら考え、変革を生み出す組織風土」への変化を目指します。
② 企業経営及び情報処理技術の活用の具体的な戦略の決定
当社では、経営の持続的成長と企業体質の強化を図るため、デジタル技術の活用を経営戦略の中核に位置づけています。
コロナ禍における人員不足を契機に、業務の属人化やアナログ体質といった長年の課題が顕在化したことから、従来の業務プロセスを根本から見直し、経営と現場が一体となって変革に取り組む必要性を痛感しました。
DX推進にあたっては、単なる「紙からデジタルへの置き換え」にとどまらず、業務の可視化とデータ活用を通じて、経営判断の迅速化と生産性向上を実現することを目的としています。
また、デジタルツールの導入・活用を通じて社員一人ひとりが変革の主体となり、自ら考え、改善を進める「自走できる組織」への転換を目指しています。
以下では、この方針に基づく具体的な体制および情報処理技術の活用方策について述べます。
(1)戦略を効果的に進めるための体制の提示
DX推進にあたっては、社長を中心としたトップマネジメントによる意思決定のもと、現場実務を担う経理・管理担当者が主導してデジタル化を推進しています。この2名を中核とするDX推進チームを設け、各部門との連携を図りながら段階的に改善を実施しています。
今後は、社内各部門においてITリーダーを選任し、部門横断的なDX推進体制を整備します。さらに、社員のITスキル向上を目的とした定期的な勉強会を開催し、知識・ノウハウを社内で共有することで、自走できるDX人材を育成してまいります。
(2)最新の情報処理技術を活用するための環境整備の具体的な方策
まずは、販売・会計ソフト「スマイル」を導入し、受注・請求・会計処理を一元管理する体制を構築しました。これにより、受注処理時間を大幅に短縮(1件あたり8分→3分)し、業務効率が大きく向上しました。
在庫管理については、当初Excelを活用し基本的な自動計算・共有機能を実現しましたが、今後は「キントーン」を基盤とした在庫・受発注のオンライン化を推進します。これにより、データの蓄積・分析を通じた経営判断の高度化を図ります。
また、ペーパーレスFAXの導入により、紙伝票や手書き作業から脱却し、1日120件以上のFAX業務を数件程度まで削減しました。これらの成果を踏まえ、引き続きクラウド環境やネットワーク基盤の整備を進め、最新の情報処理技術を有効に活用できる環境を整備してまいります。
③戦略の達成状況に係る指標の決定
現段階での主要な成果指標は以下のとおりです。
・受注処理時間:1件あたり 約8分 → 約3分(60%削減)
・1日平均受注処理時間:約10時間 → 約6時間(4時間短縮)
・FAX処理件数:120件/日 → 数件/日(約97%削減)
・ペーパーレス化率:手書き伝票・紙帳票ほぼゼロ化
・顧客対応スピードおよび顧客満足度の向上
今後はこれらの定量成果に加え、以下の指標を設定し、継続的にモニタリングします。
・社員のITスキル評価・勉強会参加率
・DX活用による在庫削減率・リードタイム短縮率
・顧客満足度(アンケート調査)
・データ分析による営業提案数・受注率の変化
これらを定期的に確認し、経営層が戦略の進捗状況を把握・見直しできる体制を整備します。
④実務執行総括責任者による効果的な戦略推進等を図るための情報発信
実務執行総括責任者である社長が中心となり、DX推進の意義と成果を社内外に積極的に発信しています。社内においては、実践例や成功体験を共有し、従業員がデジタル化の効果を実感できるよう努めています。また、取引先に対しても、自社のDX事例を紹介し、デジタル化の必要性を積極的に啓発しています。
今後は、社内報や定期ミーティング等の情報共有ツールを活用し、DX推進状況・成功事例・課題を可視化する仕組みを整備します。これにより、経営層から現場までが共通認識を持って取り組める風土づくりを進めます。
⑤サイバーセキュリティに関する対策の的確な策定及び実施
当社では、DX推進に伴い、業務のデジタル化とデータ活用が急速に進展していることを踏まえ、情報資産の保護と事業継続性の確保を最優先課題の一つとして位置づけています。これに基づき、以下のとおりサイバーセキュリティ体制の整備および具体的な対策を講じています。
まず、ネットワーク防御の基盤として、SubGate(セキュリティHUB)およびFortiGate 60F(セキュリティUTM)を導入し、外部からの不正アクセス・マルウェア侵入等の脅威に対して多層的な防御を構築しています。これにより、インターネット経由の通信を一元的に監視・制御し、不審な通信の遮断およびリアルタイムアラート通知を可能としています。
さらに、ランサムウェアをはじめとする内部感染型のサイバー攻撃対策として、AppCheck Pro(メーカー:Santec)を最大24ライセンス導入し、エンドポイント単位での脆弱性検知および不正プログラムの自動隔離を実現しています。これにより、社内PCや業務端末のセキュリティリスクを早期に発見し、被害拡大を未然に防止する体制を確立しています。
また、これらセキュリティ製品の定期保守契約を締結し、常に最新の脅威情報・定義ファイルへ更新される環境を維持しています。加えて、社内ネットワーク構成や端末利用状況の定期点検を実施し、運用面での脆弱性改善にも努めています。
今後は、これらのハード・ソフト両面の防御策に加え、社員一人ひとりのセキュリティ意識の向上を目的とした教育・研修を定期的に実施することで、「人」「技術」「運用」の三位一体によるセキュリティ対策を推進していきます。
当社は、これらの取組を通じて、DX推進に不可欠な安全で信頼性の高いデジタル環境を維持し、顧客および取引先の情報資産を保護しながら、持続的な企業価値の向上を目指します。
≪今後の展望≫
当社は、紙や手作業に依存していた過去の業務体制を脱却し、デジタルデータを活用して経営改善を行うフェーズへと移行しつつあります。今後は、クラウドシステムを活用したデータ活用型の経営判断基盤を整備し、顧客とのオンライン受発注の実現、ならびに社員の働きやすい職場環境づくりを進めてまいります。
DX推進を通じて、限られた人員でも持続可能な企業運営を実現し、地域社会および取引先へ新たな価値を提供する企業として成長を続けてまいります。